真夜中の読書家

夜だ。さあ、本を読もう。

「彷徨える艦隊12 特使船バウンドレス」を買ったった。

「彷徨える艦隊」シリーズという他愛のないSF小説がある。他愛はないのだがやたら面白く、全11巻をもう6回読み返した。

ざっくり紹介すると、「ああ、もうダメだ」とギアリーという宇宙士官が冷凍睡眠に入り、目が覚めたら100年後で、しかも味方の陣営では自分が伝説の英雄として称えられるようになっていたという展開である。そして、負けが決まっているような宇宙艦隊戦を次々に打破し、ますます名を上げていくというストーリーだ。しかも、美人大使やら美人艦長にもモテモテなのだ。実にくだらん。馬鹿馬鹿しいにも程がある。

あなたね、こんな小説、ポルノ小説と同じレベルにある作品だと言っても過言ではない。当然文学性はゼロ。斬新さも独自のアイデアもなく、ただ主人公が活躍するだけ。驚きも感動もなく読み続けるという、まさに風と徒労の読書なのだ。だが、私は、全11巻を6回読み返したのである。我ながら馬鹿丸出しではないか!?

で、今日、クレオパトラ似の妻と近所の書店に寄ったんだが、そこで「彷徨える艦隊12 特使船バウンドレス」という本を発見したのである。

え~っ、11巻で完結したんじゃなかったのか!? まだ私は、こんなくだらない程度の低い小説を読まなきゃならないのか。私はその場で地団駄を踏んだ。いや、あれは踏んだと言うよりも踊ったといった方が正確だな。華麗なる地団駄踊りだった。

値段は、税別で1,680円である。ふざけるな~っ。文庫本のくせにほとんど2,000円ではないか。早川は高すぎるんじゃ~。せめて税込みで1,280円にしてくれや~、と思わず関西弁が出てしまったのである。

家に帰って書斎に向かい、「彷徨える艦隊」が納められた書架スペースを見る。もちろん隙間などない。仕方がないなと端っこにあった「風の影」の上下巻を抜き出して、できた隙間に買ったばかりの12巻目を差し込んだ。

「風の影」はお払い箱だ。近所の女子大生にでもくれてやろう。「うれしいっ。これ読みたかったんですぅ」とキスくらいしてくれるかもしれん。

第12巻を少し読んでみたのだが、やはり前巻までのストーリーをすっかり忘れてしまっていた。仕方がないな、と私はため息をつきながら、「彷徨える艦隊」の第一巻を抜き出し、7回目のシリーズ読破を開始したのである。